Lyri*Cache

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欲望を、手放すな-魔入りました!入間くんのこと-

タイトルをぽつぽつと聞くようになったのは、数か月前くらいからでした。
友人におすすめされ、周囲でも名前を聞くようになり、アニメ離れと言われてはいる昨今ですが「知るきっかけ」としては、やっぱりまだまだ十分に効果があるんだなあと思います。
皆が口をそろえて、可愛い、癒される、幸せになる、と言うので、ああいい物語なんだろうなとは思っていたのですが、その時点ですでにアニメはクールの後半。
途中から見るのもなあ、という気持ちがあり機会があれば最初から見よう、くらいの感覚でした。
それが、先日友人宅に遊びに行ったときに「とにかく見てくれ」とNetflixでアニメ一話から見せてもらい、その日の帰り道に電子書籍でコミックスを全巻買いました。
いやあ……可愛い、癒される、幸せになります。

魔入りました!入間くん 1 (少年チャンピオン・コミックス)

魔入りました!入間くん 1 (少年チャンピオン・コミックス)

  • 作者:西修
  • 発売日: 2017/07/07
  • メディア: コミック
 

あらすじとしては、クズな両親に悪魔に売り飛ばされた鈴木入間くんが「孫が欲しかった」という悪魔サリバンに押し切られ、彼が理事長を務める悪魔の学校に入学する羽目になり、自分が人間であることを隠しながら、そこでいろんな悪魔たちに出会い、騒動に巻き込まれながら成長していく……というコメディなのですが、これが、個人的には結構怖い作品だな、と思っています。
コメディの幕で隠して、いろんな伏線が綿密に張られているのでは…?という気がしてならない。
実際、どういうことなの?という謎は物語の中に散見され、そもそも「鈴木入間」とは何者なのか?という疑問に帰結します。
どうしても普通の人間だと思えない…絶対に選んで連れてこられてるでしょ…でもなんで???

もちろんそんなこと考えなくても、とても楽しくて幸せになれる作品です。
出てくる子たちが皆基本的にいい子たちばかりで応援したくなる。
特に、入間くんと「おトモダチ」のアズくんとクララのトリオは双方に大好き!なのが伝わってきてことあるごとに「そのままずっと三人でいてくれ……三人で幸せになってくれ……」という澄んだ気持ちでいっぱいになります。かわいいよお……

入間くんは、本当にお人好しで、頼まれると断れず、自分自身にかかるストレスに対して鈍感な子です。それは、彼の生来の物というよりは、生まれ育った環境のせいでついてしまった癖のようなもので、決して良い効果ばかりは生みません(どんな時でも他者を思いやれる性格は生来の、本当に素晴らしい性質だと思いますが)
担任のカルエゴ先生にも「責任と自己犠牲を一緒にしてはならない」「自分の危険に慣れすぎている」と釘を刺されていますし、見ていると危ういなあ、と思うところがたくさんあります。
夢はないのか、と尋ねられて「周りの人は自分にどうしてほしいかということばかり考えてきて、自分がしたいことを考えたことがない」と言ってしまうような子です。
入間くんはとてもいい子で、とてもいい子なんですが、いろいろ欠落してしまっている。
でも、これって多かれ少なかれ、現代社会を生きている人間皆そうだと思うんですよね。
自分のストレスに向き合うとしんどいので見ないふりをしていたら自分の「欲」がわからなくなっていた。人に望まれることばかりしていたら、自分が何を望んでいるのかわからなくなってしまった…
入間くんほど「いいひと」になれない私たちは、それに漠然とした違和感を抱えながら、それでもこんなものだしなあ、と日々を生きている。


ふと、このツイートを思い出しました。
もう本当にこれに尽きるんですが、「欲」って悪いことじゃないんですよね。
「欲」がなければ人は死んでしまう。変化も成長もしない。正しく認識して、正しく扱えば、とても強いエネルギーを持ち、それを原動力に前に前に進んで行ける力を与えてくれるものです。
欲望を手放すな、欲望は君の命だ、ってさらざんまいでも言ってましたしそれは私も全面的に肯定しかないです。
欲することは生きること、前に進むこと、欲望は命そのもの。

入間くんは「圧倒的危機回避能力」を持ってはいますが、それは「本能」であって「欲」ではないです。受動であり、能動ではない。
でも、入間くんは次第に、自分の望みを、心を、少しずつ理解できるようになっていきます。ムカついている、悔しい、寂しい、大好きな子たちと一緒にいたい、と表現できるようになっていきます。
それが自分の心の姿がよくわからなくなってしまった大人にとても効く。
じんわりとした勇気がわいてくる。頑張れ、と応援したくなる。
悪魔は「欲」を否定しません。それのなんと清々しいことか。

自分の「欲望」を正しく見つめることは、地に足を付けて生きていくことです。
正しく見つめないと、暴走したり歪んだり、自分や周囲を傷つけることにつながってしまうからこそ、見て見ぬふりをしてはいけないものです。
なかなかうまくできないけれど、入間くんを見ていたら、もうちょっと自分の欲望に素直になってもいいのかなあと思えます。
それはきっと自分を大事にすることにつながるので。

それはそれとして、去年の終わりから「欲」に関して話を聞いたり考えたりすることが増えたなあと思います。
今はそういう時間なのかもしれません。ムーンプランナーでもそんな話言ってたしなあ。
なんだか息苦しい時世ですが、そんな時だからこそ、自分の「欲」について真剣に考えるのが良いかもしれません。
欲を言えば、たくさんたくさん、何も気にせず、良質な物語を貪っていたい。

lyricache.hatenablog.com

関係あるような、ないような、 だいぶ前に書いたムーンプランナーの話はこちら。

さいきんやっとちょっと使えるようになってきました。個人的には、自分の中の貪欲さを開放するのに最適なツールだと思います。ガツガツいきたい。