Lyri*Cache

好きなものを好きなように。

ある男の一生、あるいは私が歴史小説を読むとき-おれは清麿・燃えよ剣のこと-

間が空きました。これだからいけません。いろいろ日々それなりに考えて生きているはずなんですが、記録されない思いはないのと同じなのだなあと思います。忘れる。

近況としては、最近よく本を読んでいます。
もともと読書は好きです。小学生の頃は本を読むと褒めてもらえたので、家族全員分の貸し出しカードを持って町立図書館に行き、1枚×5冊の貸し出し権利をフルに使って二週間で30冊とか読んでいました(まあ、読みきれずに返す本も多かったですが)
インターネットもない、携帯もない、娯楽らしい娯楽はテレビくらいだった幼少期の私にとって、読書は最大の楽しみでした。今はさすがに二週間で30冊は無理ですが、時におぼれるように、がぶがぶ本を読みたくなるときがあります。

今読んでいるのはこれ。

おれは清麿 (祥伝社文庫)

おれは清麿 (祥伝社文庫)

 

 読みたいと思った理由?自明ですね?

刀工・源清麿を題材にした、歴史娯楽小説です。
恥ずかしながら、刀については何も知らないと言っていいほど知識がないので、源清麿という名前はまったく聞いたことがなかったのですが、“贋作”として有名な(これも妙な言葉ですが)近藤勇の『長曽祢虎徹』は、この源清麿の打った刀の銘を切りなおしたもの、という説があるそうです。
私、刀剣乱舞におけるこの『長曽祢虎徹』がとても好きです。
伸びやかでおおらかで、けれど贋作という呪いと主人が斬首されるという影を背負ってしまった彼のことが大好きなのですが、彼を『虎徹』とするにはやはり少し違う気がします。
では本当に彼を打ったのはどういう人物なのか。
小説なので、歴史的な資料とするにはフィクション味が強すぎるのですが、とっかかりとしてはとてもいいと思います。文体も読みやすい。
源清麿は現存する刀が少ないそうで、私も偶然、函館で一振見たことがあるくらいです。あれは運が良かったんだなあ。


で、最近読み終わったのが、これ。

 

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

 
燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

 

読んだ理由?自明ですね!

実は去年の六月から読んでいました。途中中断をはさみつつ、読了。
新撰組の小説といえば、と聞けば、まず挙げられるのではないかと思うこの小説、実は小学生の頃に読もうとして手に負えなかった記憶があります。単純に読書体力がなかったんだと思いますが、この年で再読できてよかった。すごく面白かったです。
生も死もすぐ隣りあわせで、ドライで、湿り気なくさらりと描かれていて、それが寂しくも心地よい。
人を殺す、殺される、という壁が恐ろしく低い。けれど、悲壮感がほぼないのは主人公である土方さんがまったくへこたれず、折れず、曲がらず、最後の最後まで土方歳三だったからだろうと思います。
一人の喧嘩士のとんでもなく格好いい一生。

余談ですが、読んでいる最中友人が『兼さん*1は薄桜鬼の土方さんに似ている』と口にしていたことをふと思い出しました。
個人的には、兼さんが薄桜鬼の土方さんに似ているのではなく、『薄桜鬼の土方さんも兼さんも土方歳三のステレオタイプに忠実』なのだと思います。そしてそのステレオタイプの源流を、燃えよ剣の土方さんに見た気がしました。
新撰組関連の本を多数読んでいるわけではないからわからないけど、この創作物における『微妙に柄が悪くて頭が切れるイケメン』というキャラ像の始点はどこなのだろう。
(もちろん、どんな創作物もある程度史実を基に作成されるわけだから、本当の原点といえば土方歳三本人なのだろうけど)

一つの作品から興味が派生して、他の作品に触れるきっかけになるというのは、とても面白くありがたいことだと思います。
新撰組関係の書籍は今後も読みたい。何が面白いんだろう。
そういえば、乙女ゲーの才能がないといわれた私がそんな理由で薄桜鬼もはじめました。そのうちまた感想がまとまったら記事を書きたいです。

*1:和泉守兼定刀剣乱舞における、かっこよくてつよーい最近流行りの土方歳三の愛刀。